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ほろ苦いデビュー その5 エピローグ

「Access2.0 データベース作成のコツ」は見事スマッシュヒットとなった。

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すなわち「増刷」されたのだ。初版発売後三ヶ月後に。世に出される数ある単行本のほとんどは、奥付の赤枠の部分が存在しない事は書店で調べればすぐに分かる事実。
出版社から、増刷版が出回る前に既に明細書が送付されて来ていた。その数は3,000部。

快挙である。

エーアイ出版からは、発売前に著者への「献本」として五冊いただいていた。
それはもちろん初版であり、増刷の際には二冊いただける。今回の写真はその時のものである。勲章や。(´∀`)
世の中まだまだバブル時代であり、"Windows95"効果のため、当時はすごいパソコンブームで、おびただしい数の関連書籍が出版されていたが、編集者から「増刷に至るのはその 5%にも満たない(!!)」と聞かされていた。(゚д゚)
いくら数が多くてもそのほとんどが"ゴミ本"だったので、自分でも「そんなもんやろなぁ」とも感じていた。

率直にいって、少し運が良ければライターになる事は不可能ではない。
能力と環境とタイミングが合えば。それは自分の例からも明らかである。しかし、それとヒット作品とは別である。
「増刷」とは、書店から出版社(正確には卸会社)に対して追加注文があったという事実の証明である。

それは市場(一般読者)に受け入れられたという証であり、極論すれば、いかに熱意を持って取り組んだのだとしても、増刷されないのであれば執筆者と出版社の自己満足に終わってしまっただけという事になる。
※製品の販促だけが目的などという場合もあるが、それは例外である。

初版で終わってしまったならば、出版社としては失敗商品であり、度重なれば経営が成り立たなくなる。
執筆者にとっても「自分の作品は本当に価値があったのか ?」と自問自答するしかないのである。ヒット作品すなわち増刷を勝ち取るには、世の中の多くの人が求めているタイムリーなものであり、内容的にはさらにそれを少し上回っていなければならない。(これは個人的な持論に過ぎないが)
数ある"ゴミ本"の一種だったはずなのに素晴らしい売れ行きを誇っていたインプレス社の「はじめての・・・」シリーズも見事だった。当時の水準では紙面構成が図抜けていた。企画とデザイン力の勝利だったと思っている。

しかし、大半の書籍はやはり内容勝負である。トレンドに沿って、しかも半歩先をゆくようなものでなければヒット作とはなりえない。佐田 守弘氏のヒット作であった"松・桐"の「コンプリートガイド」シリーズも一見"ゴミ本"になりかねない企画にも関わらず、上っ面だけの説明に終わる事なく適度に掘り下げた、内容の濃いものだった。
もうひとりの大先輩である、浦秀樹氏の「桐の販売管理システム」の本も良く売れたと本人から聞かされていた。
やはり、大半の"ゴミ本"とはまったく内容の異なる、読者が本当に求めていたはずの実務に役立つ内容だった。

もちろん、書籍の性格によっては発行部数そのものではなく、世に出る事自体に価値があるという場合も少なくない。数十年後に高評価を獲得する事例など珍しくもない事も誰もが知っているのだが、パソコンソフトの解説本の場合はまったくそのような例には当てはまらない"生モノ"であるのも当たり前である。

1995年当時、パソコンソフトの解説書で"Word"や"Excel"と並んで"Access"がメインストリームになる事くらい、誰にでも分かっていた。その理由は、覇者であったマイクロソフト社が強力にプッシュする製品のひとつだったから。
それゆえ、すごい数の解説本が次から次へと出て来て、書店の棚にズラリと並んでいた。
新米ライターの或間氏は、暇さえあれば足しげく大阪梅田の「紀伊の国屋書店」に通い、その度にほぼすべての本をチェックしつつ「たしかに価値あるのは5%以下やな・・・」とひとりうそぶいていた。
同時に、自分の本が売れる度にそのお客様の背後から秘かに最敬礼もしていたのだぜ。(;`ー´)

自分のライターとしてのコンセプトは「初心者から中級者へのステップアップに役立つガイド」であった。そのような目的で書かれた他社の本はないではなかったが、ごくわずかであり、しかもそのほとんどが零細出版社だった。
平均レベルの高い書籍や雑誌を多数出版していた、メジャーなエーアイ出版からデビュー出来た自分は、本当に運が良かったのだと今でも思っている。
「Access2.0 データベース作成のコツ」の前半部は、取るに足りない"ゴミ本"に等しい内容であり、それが今でも残念なのではあるが、しかし S氏の推薦なしに"Access"本のライターになれたかどうか定かではないので、そこはやはり妥協して納得するしかないし、経緯はどうあれ、S氏への感謝の気持ちは今も変わらないのも事実。

ともあれ、営利企業である出版社が、増刷を期待出来るようなライターを常に求めている事など、当時も今も自明の理である。過去にどれほど実績があろうと「これから」売れなければ価値はないとみなされる。

田中さんからは既に増刷前から「Access95の単行本もよろしくね。」と確約されていた。もちろん単独執筆で。
S氏と自分には実際にはそれほど年齢に大きな開きはないのだが、"新世代のホープ"として迎えられたのである。
優しく暖かく接してもらえたのは、今から思えば当たり前であったのだな・・・

とにかく事実上、ここから自分のライター人生はスタートしたのだ。ヽ(*´∀`)ノ
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