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ほろ苦いデビュー その4 危機

今回はシリアスな内容につき、本文にフェイスマークは一切使用しないのでご了承下さい。( ´ー`)

Access20AI3s.jpg
「Access2.0 データベース作成のコツ」冒頭の"はじめに"。
これを書いたのは共同執筆者であるS氏。お見事。さすがにスキがなく格調高い優れた文章である。
しかし、実はこれを書くのは自分の役目だったのだ。なぜこうなったのか・・・

原稿を提出してから約二週間後、フツーの生活リズムを取り戻せて安心していたが、突然最大の危機が訪れた。
休日の昼下がり。自宅のファクシミリに 3ページ分の原稿が送信されて来た。担当編集者による校正である。
当時は文書イメージを容易に作成・交換出来るPDF形式などが存在していなかったので、手書きで校正した結果をスピーディーに送る手段としては、とにかくファクシミリになるのであった。
それを承知していたので、パーソナルファクシミリを自宅に設置してあったのである。

その内容は惨憺たるものだった。文章の大半が赤入れ(線引と訂正文字)されていて、仮にそれらの指摘部分を削除したとしたら、ほとんど 原型をとどめなくなる ほどの割合だった。
"はじめに"の他、サンプルアプリケーションの冒頭 2ページ文も含まれていた。すべてズタズタである。
要するに「全部書き直せ」と突き返されたようなものだ。しかしいかに熱意があろうと、全部書き直しなど絶対に不可能である。締め切り期限(たしか契約から三ヶ月)も変わらない。

自信を持って送り出していただけに、その衝撃は大変なもので、ショックの余りその後数日間はまともに口がきけないほど打ちのめされていた。
自分の文章作成能力は、他では通用してもエーアイ出版では通用しないと宣告された事になる。
共同執筆とはいえ、それまで三冊も解説書が出版されていて、校正など一度もされなかったのである。自信を持つなという方がムリというものである。それだけに二倍の衝撃となって襲って来た。

そんな中、数日間悩んで、少し心が落ち着いてから思い返してみた。
「良く考えてみれば、まったくのシロートライターの原稿が校正されない方が不自然ではないか。」
たしかにそうだ。秘かに手直しされていたのかもしれないとひらめき、手元に残してある原稿と三冊の単行本の内容をチェックしてみた。結果は記憶通り何も手直しはされていない。原稿がそのまま出版物となっていた。

エーアイ出版だけがきちんと原稿を精査して校正しているわけで、その姿勢はさすがだと改めて感心した。いや、それでも出版社たるもの、原稿の校正作業を省略して良いわけがないはずなので、エーアイ出版は当然の事を行っているだけなのだ。とはいえ、自分の原稿が不合格のダメ出しされた事実も厳然として存在する・・・

しかし途方に暮れてばかりもいられない。幸いな事にこの世界の大先輩がパートナーなのだ。
ご相談してみようではないかと、とりあえずメールで経緯を報告したらS氏から深夜に電話がかかってきた。
そして、かんたんな事情説明のやりとりの後で驚くべき提案をされた。

「エーアイからも"難しそう"と言ってきているし、そんなに自信がないなら、原稿をもらえば後は引き継いで私がやるよ。安心して任せてくれていいよ。」

そんな反応は想定外。返す言葉がなかった。文章の書き方など、出版社からの校正指示についてどのように対処すれば良いかのアドバイスを期待していたのである。不可解。結局不安が増幅されただけだった。
実際、投げ出してしまいたい気もないではなかったので、その場はあいまいな返事をしておいて眠りについた。

そして翌日。「やはり正攻法に限る」と意を決してエーアイ出版の田中女史に電話した。これまた驚愕となった。
田中さんは自分からの連絡を待っていたらしく「やっと電話をくれましたね。」と優しい口調だった。校正結果については「新人の場合は特に入念にチェックを入れるので、訂正だらけになるのが当たり前。」と事もなげの回答。
文章力そのものは特に問題ないが「理系の本なのだから"主観の排除"が最重要。」と教えてくれた。云われてみれば、たしかに赤入れされていた部分は"思い入れ・憶測・推測・自分の好み"に該当する部分がほとんどだった。
最初の自分の"作品"なので必要以上に肩に力が入っていたわけである。
やっぱり相談して良かった。一気に気が楽になった。

それでは、どこが"驚愕"なのかというのは上記の会話の後である。一週間後に再提出する事になり、感謝の意を述べて電話を置く前に S氏とのやり取りを報告したら田中さんの表情が一変した。
※「電話やんけ!?」って・・・いや、口調がまったく変わったので分かるのです。

「やっぱりそんな事を!! また!!」

「ん ? "また"って何ですか ?」呆気にとられて聞いてみると「以前にも同じ事があり、これで三度目になる。共著でスタートしても途中からパートナーがリタイアして、最後は S氏単独の作品として出版されたんですよ。」
「そ、そんな事があったんですか・・・」
「だいいち、S氏に或間さんの能力が不足しているなどと一言も云ってませんし!!」

いやはや、何とコメントすれば良いのかと返す言葉がなかったが、田中さんから「絶対あきらめないで、頑張って仕上げて下さいね。」と嬉しい激励の言葉をいただいた。
田中さんのアドバイスのおかげで、コツが少し分かり、再び怒涛の勢いで原稿を全て洗い直して予定通り一週間後に提出すると翌日電話連絡があった。
「合格です。もうほとんど直すところはありません。一度でここまで進歩する人も珍しいですよ。」
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